フェアな推論

就職活動中のラボの後輩が、エントリーシートのために研究概要を書いてた。
指定形式は、背景・研究方法・結果・考察・今後、ぐらいのIMRADだった。それで、研究成果というほどのものはないけど、実験した分だけデータがあるからそれを元に書くって感じだった。


んで、叩きがてら完成前のを見てて気になったのは、考察が希望観測的だったり我田引水的な文章が多くてちょっと読みづらかった所。色んな先行文献を調べて自分で考えてるってよりは、適当に思いつきを書いてるように見えた。それでフェアに考察するのは大事なんじゃね?って言ってたところ、後輩に「フェアってなんですか?」と言われてしまったので、最近「フェア」について考えてる。


フェアさに関しては、2ヶ月前に読んだ「系統樹思考の世界」も頭に残ってる。系統樹思考の世界では、Induction(帰納)/Deduction(演繹)/Abduction(仮説形成)って言葉を使って研究における推論のフェアさについて書いてあった。Abductionの訳はgoo辞書によります。

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

系統樹思考の世界 (講談社現代新書)

研究と考察、どこからが考察なのか

研究成果が出てない(であろう)学生の人物評価の時に見る点は、きっと考察。どんなデータでも、それをベースにして自分なりに考える能力ってのは現れるはず。


んで、研究報告をするときに必要な考察は、「自分のデータから言えることを考える」のと「それを元にして考えられるストーリーをつくる」こと。最良の考察の形式は、「自分のデータから@@@が言える」とか「今回言えた@@@から、こちらの文献の@@@が説明できる」、「@@@であることがわかったので、今後@@@を調べるとさらに@@@がクリアになるとおもう」っていうスタイル。


いきなり「この点が不明のままだから、今後調べる必要がある」は考察ですらない。自分のデータを放ったらかしにしてるから。

フェアさとは

この考察をするときの「フェアさ」ってすごく大事だと思ってる。フェアさってのを言い換えると、納得性・妥当性ぐらいで、人を納得させるのに十分な妥当さ、かな。んで、考察の後半で出てくる今後の「推論」みたいに、何かわからないことを面白く説明してみせる、とか推測をするときには特にフェアさが要になるとおもう。

推論の基本的な方法

基本的に考察と同じで、説明不足や飛躍などでフェアさに欠けると妥当性が欠ける。「系統樹思考の世界」で書かれてた推論の形式に最大節約法最尤法がある。どちらも系統樹を書くための方法らしいけど、知っとくと得する、かもしれない。

最節約原理

オッカムの剃刀ともいう。自分の理解では、「わからない部分を推測するときに、あると想定しなければならない要素を最小限にすること」


例えば、「さっき自分がAさんと話してから、Aさんの機嫌が悪くなった」原因を説明するとき、

・話し終わった直後、奥さんから電話があって、小言を言われた
・話している間or話した直後に歯が痛み始めた
・顔面痙攣になっているだけで、本当は機嫌は悪くない

などの説明より、

・自分がAさんの機嫌が悪くなることを言った

の方がそれっぽくて、ありそう。納得が出来る。
この理由の一つが最節約原理で、あるかわからないことをいくつも想定するより、実際に起きたことの中に一つの原因を求める方が説明しやすい。ありえそうなことをたくさん想定するより、一つのありえなそうなことを想定するほうがそれっぽいっていう理屈かなー

最尤法

自分でもよくわかってないけど、もっとも「それっぽい」ものがいいじゃんって考え。系統樹思考の世界では「推論の妥当さは定量できないけど、それっぽさはわかる」みたいな説明だったと思う。尤度って値が存在するから不思議。

フェアさのまとめ。推論をしてみる

ラブホテルから男女二人が出てきました。さて二人はラブホテルで何をしてきたのでしょうか?


これにどう答えるとフェアなのか?すごくフェアな推論ができる問題。
次。


ラブホテルから男二人が出てきました。さて二人はラブホテルで何をしてきたのでしょうか?


これにひとつだけのフェアな推論をするのはむずかしいかも。「雨が降っています」とか「片方は飲み過ぎて寝ています」などもうちょい条件をつけると「フェアな答え」のバランスが変わってきそう。
さらに。


男が二人街中を歩いています。さて二人は何をしているのでしょうか?


ここれまで来るとまともな推論はできないかもしれない。できるのは空想。答えの許容範囲が広がりすぎて、「フェアさ」の代わりに「面白さ」とかの評価がつきそう。

最後に

・「空想だけど面白い」は人生を面白くする種だと思う。
・「許容範囲」って概念も少し前から考えがちなのでいずれ文章にしたい。
・このエントリを書いたのは、結局ラブホテルの話が書きたかっただけかもしれない。