リスクとリターン、それとラック
リスクとリターン
前回もリスクについて書いた。
学生のうちにたくさんリスクをとっておくといい - ある生物系博士課程大学院生の日記
んで、リスクの対価で得られるものがリターンというのが一般的なんだけど、もう一つのキーワードとして、「運(Luck)」があるんじゃないだろうか。以下の様なことを念頭に置きつつ書いてみる。
・リスクをとった時に、報酬があるかどうかはラック(Luck)によるところが大きい
・リスクとリターンは非対称な感じもするし、運が一意的な決定要因かもしれない
・「報酬・リターン」の定義を自分オリジナルになってるかどうかも大事
成功した投資家は、優れていたのではなくて、運が良かった
というようなことが書いてある。
なぜ投資のプロはサルに負けるのか?― あるいは、お金持ちになれるたったひとつのクールなやり方
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大きく相場が動く時、損をする人がたくさんいても、その分と同じだけ得をしている人もいる*1。この時、優れているだけでは、得をする側に回るには十分ではない。そこを決めるのは、ほぼ運*2。
成功した人は「成功した方法」を本にすることができるけど、再現性はきっと相当低い*3。リスクを取るのは誰にでもできるけど、それに見合った結果が伴うかどうか=成功するかどうかは運次第であり、確率論の世界。
進化して生き残ってきた生物は、適応していたのではなくて、運が良かった
中立進化説は、適応してきた生物が生き残っている(Survival of fittest)のではなくて、たまたま運が良くありつづけた生物が生き残っている(Survival of luckiest)という考え方。ダーウィン的な適応だけじゃ現実を説明できないだろうし、運が良いことは生存競争の十分条件になりうる。
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起業が成功するかどうかは、運次第
就活中、マッキンゼーのプリンシパルに「起業したいんですけど!」と言ってみたらこう返ってきた。
コンサルやっても起業で成功するかどうかとは関係ないよ。失敗のリスクを下げることはできても、もともと成功するスタートアップはごくわずか。その中に入れるかどうかは、腕や実力ではなくて、時期やなんやらが完璧に合って「運が良かったかどうか」だよ。
「成功する方法」がほしければ、本屋さんにたくさん売ってるよ。でも、成功法を知ってる人は、よほどの善人じゃなければ、それを他人とShareしないよね。実際、それを読んだ人がみんな成功してるわけじゃないから、それが「成功する方法」ではないってこともわかるよね。成功法なんてないんだよ。やってみて、結果を見るしかないんだよ。と、そこまで言ってもらえた。
リスクはいつでもある
お金は、投資するとリスクがある。リスクに見合ったリターンがあるかどうか、大数の法則では正しくても、自分の行動=サンプルが1つしかない時、結果もまた一つだけ。そこはほぼ確率論であり、運による。投資しない場合、「円」は残っても、インフレや円安で価値が減ることはある。これもまた投資しないことのリスク。
生物にとっては、生き残って子孫を残せるかどうかが一番大事。生き残り、子孫を残す。ヒトの世界ですら、運による話。交通事故で死ねば系統は途絶え、世間知らずな中学生でも間違って子どもが生まれれば系統が維持されるかもしれない。長い目で見た時、どの系統が残っているのか。リスクとかリターンっていう細かい話ではないけど、確かに「子を残す前に死亡するリスク」が現実になればそこでおしまい。
リスクをとらないとラックもないジリ貧
リスクをとると、何か結果は出る。十分な運に恵まれれば成功したり、頑張りが足りなくて失敗したり。つまり、リスクをとれば、「結果的に運があったかどうか」ぐらいはわかる。
当面の結果だけを客観的に見ると成功・失敗と区分できるけど、一人の人生を通して長い目で見た時に評価が変わる出来事は多い。「あの時適当にやったことで失敗した自分を反省して、その後の行動を変えられた」のであれば、失敗を次の成功の原因にできる。逆に、「宝くじで当たったことで、身上を潰した」ケースもあるだろう。長い目で見た成功は、「その後の展開」と「自分のリターンの定義」によるんじゃないだろうか。
リスクをとらないと、結果は出ない。成功も失敗もしないし、運があったかどうかもわからない。前回も書いたように、それ自体がリスクになりうる。*4