研究の実行面での全体像をおさえておく

研究というアカデミックな話の前に、研究成果を出すためにどう研究を進めるのか、という泥臭いけど大事なイシューがある。昨日後輩と話してて「これをやっとくといいかなー」と思ったことを書いておく。

ちなみに、前回は「常に考え続けるべきこと4つ」を書いた。
研究で常に考え続けるべきこと4つ - ある生物系博士課程大学院生の日記

研究>実験>作業

研究は、実験なり解析なりをして出てきた結果で語られるもので、実験や解析の「作業」を積み重ねることでそこまで行けるようになる。


ということで、実行面での全体像は、作業レベルの話になるはず。

ガントチャートで作業の全体像を粗くつかまえる

で、時系列に沿って、することになる作業を計画・把握しておき、それぞれについて

  1. 時期:どの段階・どのタイミングでやることか
  2. 課題:どんな作業上の課題や決めるべき事項が出てきて
  3. 解決策:どのような解決策、どのような決め方があり得るのか


などをざっくりとつかんでおくと良い。

作業別に分解して把握する

作業とは、「コンストラクト作成完了」や、「測定条件決定」、みたいに、一段落して研究上の何かが前進するもの、他の作業への律速段階になりうるもので、「PCRをする」みたいなタスクではない。


手書きで粗くガントチャートを作って、それぞれの作業の中に

  1. 目的の定義:その作業の目的、その作業で得たいもの
  2. 課題と時期:そのために決めなければならないことと、そのタイミング
  3. 作業課題と時間見積り:技術的な課題と解決に必要な時間・作業
  4. 現段階で不明な点:今の段階で、不明な点・調べるべき点

などを盛り込む
並行して進める作業もあれば、これが完了しないと次に進めないという直列的な作業もある。だから、ガントチャートが良いと思う。

全体像のつかまえ具合とそのためにかける時間

この「つかまえ具合」はけっこう大事で、重要なのは「正確さ・粗さ」と「時間的コスト」。


つかまえ具合は正確な方がいいんだけど、3ヶ月後のことを細かく決めるために今3日間かける、みたいなことはしない。遠くのことを正確に書くのには限界があるし、書けても大きな方向転換があり得る。そもそも現段階でそこまでは必要じゃないことが多いはず。


それよりも、「今の段階でちょっと考えればわかることプラスアルファ」のつもりで全体像把握をし、実際に作業を進めるにつれて、ガントチャートが深まって、クリアになっていくイメージのほうが良さそう。

実際にガントチャートを書いてみる

コンサルのケース面接的なやり方を応用する。

  1. 自分の頭だけで*1
  2. 5〜15分間かけて*2
  3. 書けるだけガントチャートに書き込む*3


これを書いたら、そのうちのどれが大事で、どれがほったらかしても問題ないか、か考える。


大事さの基準は

  1. 時間:今やること、急いで済ませておくべきこと
  2. 重大さ:そのステップがうまくいかない場合、研究がハマってしまうポイント。バックアッププランを考えておくなり、それをせずに済む方法・研究設計を予め意識して考えたほうが良いこともあり得る。


逆に、

  1. その時になったらやれば良くて、
  2. 計画通りにうまくいかない場合でも、「最終的にはこれに頼れば大丈夫!」というものがある
  3. 研究全体が止まらない

などのステップは、「そんなのもあるね」という感じでほっとけば良い。

重み付けができて、出てきた「今調べるべきこと」を調べるぐらいまでいったら、それを誰かに見せる。それでコメントをもらってブラッシュアップしたら、当面はそれぐらいでいいんじゃないかと。

作業の全体像をつかまえるメリット

  1. 作業の概観がわかれば、サブ的なトピックが出てきてもとまどわない。方向性が狂わない。
  2. 直近でやっていることの位置づけが明確になり、どんなものを得たいのかがよりクリアになる
  3. たくさんある課題について、時系列で「このタイミングで決める必要がある」とわかる。そうすると、「これは今はやらなくていいや」と判断できる。
  4. 「この実験をすることになっている」という考えで実験しているのと違って、「この作業はこの目的」と把握することで、「その目的なら他の方法もあり得るよね」とか思いつく、かも。

などなど。さらに、一段落するか2週間程度の目安で、このガントチャートを見直し、追加・変更がないか確認を続ける。そうすると、だんだんクリアになったり、

もうラボに行く。

推敲とかがハンパになっちゃったけどもういいや。後ほどまた修正するかも。

*1:この段階で調べ物はしない。時間がかかるから

*2:これで出てこないものはいくら考えても出てこない

*3:基本は大きな所から。だけど、どこでもいいから思いついたところからどんどん書き込む