研究者ーFirst authorとして生涯現役でいられるか?

実験が好きでも、研究者としてまっとうにキャリアアップしていくと実験ができなくなるジレンマ

大学院進学やポスドクになると決めるとき、結構多くの人が、「実験をするのが好き」だったり、「自分でデータを出す瞬間が好き」だったりして、進路を決めてたりするんじゃないかと思う。これって、「データを出して第一著者になる」ことイコール研究で、「そういう意味での研究」が好き、という段階での志向なんだろう。けど、そのまま順調に助教→准教授→教授となっていくと、だんだん実験現場からは離れ、プレーヤー的な仕事が減り、マネージャー的な仕事が増えていく。最初の志向とは違っちゃってくけど、まあ仕事だし対応していくよ、という人はたくさんいるだろうけど、やっぱりこれって最初の希望と違う、という意味でのジレンマがあるように思う。

実験が好きならテクニシャンでいんじゃね?

自分も割と実験そのものが好きだったりするので、テクニシャンになったらそれなりに使える人間になれるんじゃないかと思ったりする。でも、テクニシャンが安定して仕事を続けたり、あるいはある程度の権限を持たせてもらって*1、持ちうるテクニックや知識、経験知などを高め、専門化していくそういう土壌があるようにあまり思えない。「あのテクニシャンは〜〜のエキスパートですごく頼りになるよ」という話は聞いたことないけど、「テクニシャンってひたすら電気泳動流しまくる人でしょ?」という話はよく聞く。


これはお金で「単純作業にかかる時間を買ってる」って形で、「他では替えがたいもの」を買ってるわけじゃない。んで、日本のラボでも後者のようなお金の使い方となるように、テクニシャンを育て、養う土壌を持てば、「博士課程卒で研究者にはなれないけど、博士課程でのテクニカルな蓄積がある」とか、「実験大好き!研究はよくわからんです」的な人を有効に活用できる。と思ってるんだけど、まあそれは置いとく。

まとまった時間がないから実験はしないけど、データは出せる、そういう現役のカタチもあり得る

この前ある講師の先生に、「実験をする時間はないけど、ドライな解析とかなら細切れの時間でデータが作れて、自分で論文も書けるよ」と聞いた。これってたしかにそれっぽいし、すごく納得がいく。ウェットなものでも細切れでやれることもたくさんあるだろうし、ドライでもまとまった時間がないとよくわからなくなっちゃうこともある。でも、やれる範囲のことを探してやっていくってことはすごく大事。


これから自分が博士課程修了後にアカデミックな世界に居残ろうとするとしたら、今は知らないマネージメントの仕事もやってみたいし、それはそれですごく面白いだろうけど、研究の原点とも言える「自分でデータが出せて、First authorになれる現役研究者」であることにはこだわって行きたいと思った。

*1:例えば、ラボのMSの管理から運営・維持を任される、など