学振に申請すべき3つの理由と、申請して落ちた時にすべきこと

学振DC1/2について、申請書の書き方・心構えなどについては他にいくつも参考になるウェブページがある。けれども、それ以前の問題として、学振そのものを知らなかったり、出してもどうせ当たらないからといった理由で書かなかったりする院生が多かったりしてなんとも微妙だなーと思ってた。ということで、そういった人が書く気になるような「申請すべき理由」を以下にまとめる。

その一 お金がもらえる

生活費として使えるお金が毎月20万円、特別研究員奨励費として研究費が年間100万円以下*1。ただし、研究費は実際には100万円もらえることはあまりないらしく、自分の周りでは70万円程度で一律に交付されてるように見えた。あと、昨年度は震災の影響で科学予算の決定が遅れたことにより、最初は科研費が軒並み7割だけ交付され、後になって3割分追加されることが決まって、結局全額交付されたみたい。


んで、DC1で3年間だとすると、生活費分が20万円×36ヶ月=720万円と、研究費で300万円弱、合計1000万円ほどがもらえることになる。学振がなければ、奨学金で借金を増やしたり家族に融通してもらったりしてもらわなきゃいけないところを、生活費として使える分が無償で720万円もらえたらすごく大きい。このお金は申請書を出さなきゃ当たりようがなくて、んで実際に出してないけど採用されるべき人がいるだろうし、その分だけ出しといたら当たっちゃったという人もいることだと思う。*2

そのニ これからの自分の研究について全体像の想像・把握をする機会ができる。

申請書を書く中で、自分の研究が向かう方向を考えたり、その方法を考えたり、あるいは、予想される結果と意義を考えたりできる。自分の場合、DC1申請の段階で初めて「研究の全体像を想像する」機会になった。


不完全な全体像にしかならないのはわかっているけど、色々と調べ物をしたりしながらできるだけ詳細に、現実的に研究像を描いてみる。*3この作業は、DC1がダメでもDC2に出す頃になってればある程度研究も進んで、DC1に落ちた申請書のうちどれだけが現実にできたか、そういったことを反省し、次の申請に活かす材料になるだろう。また、のちのち博士論文をまとめるときの下地としても、コツコツ全体像のイメージを作っていくのが大事だと思う。

その三 予算権限者になれる

当たると前述の通り研究費がもらえる。年間70万円×3年だったら、若手スタートアップに近いぐらいの金額だと思う。ある先生の「インパクトファクター1につき、研究費30万円程度が健全」という計算であれば、奨励費だけでもインパクトファクター7相当の論文が出せる計算になる。


このお金でもって、自分用のピペットマンを買ったり、試薬を買ったり、旅費として学会や出張に使ったり、あるいは、自腹だとつい買わずに済ませてしまう専門書を買ったり*4。業者さんと自分で話し、決定することが増えるだろうし、自由に使えるから試薬だとかについて調べることが増え、以前より知識も増す。こういったいろんな経験を積めるから、その分自分の研究者として持ってる視点も確実に一つ上のレベルに上がる。


ラボによっては自分で使わずにボスに任せてしまうかもしれないけど、ここはぜひ自分で使えるようにすると良いのでは。予算権限者になることでそれなりに面倒も増えるけど、将来的に研究者を目指すならぜひともやっておきたい。

以上のような理由で学振の申請書は出すべき。んで、当たることもあれば落ちることもあるんだろうけど、落ちたときにはそれをさらなる踏み台にできるはず。

落ちたらすべきこと 落ちた申請書のブラッシュアップと、その申請書での他助成金への申請

学振に落ちると、業績が何点で今後の研究計画は何点、みたいにその申請書に関する評価がもらえるとか。だったら、その点数を見ながら、自分の研究計画書を練り直すときっとより良い申請書に生るはず。んで、それが当たるまで申請と練り直しを続けて、民間助成金などに出し続ける。そういう練習をしたら将来きっと役に立つよね。


あと、学振特別研究員は、他助成金を受け取る事ができないので、採用されると他には申請書を書く機会がないというのがひとつのデメリットかなーと思う。だからこそ、落ちた人は落ちた申請書を他の助成金に活かし、同時に、自分の書く能力を上げるようにすると良いと思う。

まとめ

以上、将来研究者になるなら学振に申請すべきだと思う理由。また、日本のアカデミックがそうなのかわからないけど、上記のような研究費や申請書を書くことについて博士課程学生が意識付けを受ける機会がないし、なにより大学院でいくら単位をとったところでこういうトレーニングを受けるチャンスがない。で、書いて出すのが一番の練習になるはずだからみんな出せばいいのに、と思う。
自分が現状で研究者志向でないのがどうしようもなく残念なわけだけど、まあ申請しといて損はないと思います。

*1:理由書を書けば150万円まで申請できるけど、ほとんど通らないっぽい

*2:自分も後者だと思う

*3:ただし、申請書としては夢のある話をするのも大事

*4:奨励費については、専門書を自由に買えるようになったのが一番うれしかった